胸が痛むと真っ先に心臓の病気が心配となります。不安定狭心症や心筋梗塞・大動脈解離は典型的な救急疾患であり、一刻も早い治療が必要となります。心臓由来の胸の痛みはある程度特徴があります。それは突如として起こる胸を締め付けられるような、なんとも不快な数分以上続く痛みです。冷や汗、吐き気などの随伴症状、糖尿病や高血圧、脂質異常などの合併症があればより疑わしいと考えて速やかなる検査が必要です。幸いそういったニュアンスが乏しい場合には、体の病気としては肺や食道の病気などの可能性も考えます。実は肺の中(肺自体)は痛みを感じることはなく、肺を包む膜(胸膜と言います)の刺激に伴い痛みを感じますが、その痛みは呼吸により変動する特徴を有します。食道の病気としては逆流性食道炎や食道癌なども胸の痛みの原因になります。食事との関係、胸焼けなどの合併、癌の場合は進行性の経過が参考になります。これらの疾患に当てはまらないものは原因不明または肋間神経痛と雑に呼ばれることも少なくありません。不安に伴い胸が痛んだり、胸の痛みから不安が増大したりということもあり、そのような場合は心臓神経症と呼ばれて心療内科の担当領域となります。